落とし物のスマホと酔ったおじさんの笑顔

人通りのない深夜の帰り道。信号待ちをしていると、どこからか着信音がずっと鳴り続けていた。
音のする方向に目を向けると、そこには小さなパーキング。
車のドアはすべて閉まっていて、人の気配はない。不思議に思って近づいてみると、車の下にスマホが落ちていた。

電話に出てみると、相手は落とし主の知り合いで、飲み屋の店員さんと落とし主本人だった。どうやら、飲み屋の帰りにスマホを落としてしまったらしい。
すぐにコンビニの前で待ち合わせることになり、10分後、無事にスマホを渡すことができた。

現れたおじさんは、酔っぱらっていてフワフワした様子だったけれど、「ありがとうございます」と何度も笑顔でお礼を言ってくれた。とても安心したような表情だった。
お礼に缶コーヒーをいただいた。

今回拾ったのはお宝ではなく、たまたま見つけたスマホだったけれど、その中には、その人にとって大切な写真や思い出が詰まっていたかもしれない。
それを無事に返すことができて、自分もなんだか幸せな気持ちになった。

きっと、明日は不安な一日になっていたかもしれない人の「いつもの日常」を取り戻す手伝いができた。
そんな小さな幸せを噛みしめながら、缶コーヒーをいただきます。