<ストーリー>
ラジコンを盗んだ犯人を捜す。盗んだのは子どもたちだった!実は悪ガキでとてもズル賢く、一筋縄では返してもらえなさそうだ。
-出版情報-
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第6話 捜索
部屋の探索
「天井まで本がいっぱいだー!」
りんごが小さな体を反らして見上げると、書棚には古びた本が隙間なく詰め込まれていた。
「ここは本をしまっておく部屋みたいですね」
いちごは真面目な顔でうなずく。
「うーん、この部屋にはなさそうだね」
ももが肩をすくめる。
りんごの視線が、部屋の隅に置かれた棚へ移った。
「すごーい、綺麗な石がいっぱい」
「……あのおじさん、石を拾ってたんだね」
ももも石の並ぶケースを見て納得顔だ。
すいかは黙ったまま、黒い瞳を細めてじっと覗き込む。
「……」
「きれい……」
いちごは別のクリスタルに顔を近づけ、宝石のような光を映し出した。
「石を拾ってただけなら、きっとラジコンを盗ったのはあのおじさんじゃないよ」
りんごの声に、ももが同意するように頷いた。
「そうだね。戻ろうか」
フルーツちゃんたちが机から飛び降り、出口へ向かう。その瞬間――。
開いたドアの隙間から、白く光るメガネをかけた男が、じっと彼女たちを見つめていた。
家の前
「遅いな……ひょっとして何かあったんじゃ!?」
外で待っていたハルは、焦れたように辺りを見回した。
「ただいまー!」
りんごが明るい声で帰ってきて、後ろからいちご、もも、すいかも続く。
「おかえりなさい。どうだった?」
まりが迎えに出る。
「なかったよ」
りんごは残念そうに首を振った。
「じゃあ、残りはあの子たちね」
まりの声に、ももが提案する。
「三人のお家にそれぞれ探しに行く?」
その時――。
「どけどけどけ〜っ!」
猛スピードのラジコンカーが足元をすり抜け、笑い声をあげながら子どもたちが追いかけていく。
「――あれだ!!」
ハルとまりは同時に叫んだ。
道端の対峙
ラジコンで遊ぶ子どもたちに、ハルが歩み寄る。
「ねえ君たち。そのラジコン、僕のなんだ。拾ったのをそのまま持って帰っちゃのかな」
「このラジコンは買ったんだ!」
子どもの一人が言い返す。
(嘘なのはわかってる。これは十年前の限定モデル。こんなちびっ子たちが持っているはずがない……)
「おかしいなぁ。十年前に発売したんだよ。君たち、そのときまだ生まれてないだろ?」
子どもたちは顔を見合わせ、口ごもる。
「……新品じゃなくて、中古で買ったんだよ」
「名前でも書いてんのか?」
「これがお前のだって証明できるのかよ?」
(こいつら……やるな)
ハルとまりは同時に目を細めた。
「限定品だ。簡単に手に入らない。どこの店で買ったんだ?」
「東京のリサイクルショップだよ! こんな何にもねぇ島の田舎者に都会のこと話したって分からないだろ」
子どもたちは高笑いをあげた。
「それ、プレミアついて高かったろう? 子どもの小遣いで買えるのかな?」
「父さんは会社のCEOだから、なんでも好きなものを買ってくれるんだ。お小遣いだって大学生より多いんですけど、なにか?」
「うぅぅ……」
ハルは地面に崩れ落ちた。
ビニールハウス作戦会議
「全然いい子じゃない! すっごい悪ガキだったじゃない!」
まりが憤慨し、地面に突っ伏したままのハルを小突いた。
「ほら、あんたも倒れてないで起き上がって! 取り返す方法考えなさいよ!」
「……」
りんごが眉を寄せる。
「あれじゃあ取り返すのむずかしそうだね」
「言ってもダメなら……こらしめるしかないか」
ももが険しい顔をする。
「コ●ス?」
いちごの小さな声に、その場の空気が凍りついた。
「な、何言ってるのいちごちゃん!」
フルーツたちが一斉に止める。
「だってさっき観た映画で、ヒーローがワルモノをやっつけて、みんな喜んでいたから……それが正しいのかと」
いちごは首をかしげる。
そこにマリが来る。
「みんな何かいい案ない?」
「コ●……」
言いかけたところで、りんごが慌てて遮った。
「まだ何も思いついてないんだ!」
「こうなったら――宇宙人様の本気を出すしかない!」
ハルの声に、すいかがうなずく。
「うむ。『ランベルディーノ奪還作戦』を開始する」
作戦立案
ホワイトボードの前に並んだフルーツちゃんたち。ももがラジコンを指差す。
机の上には、アメリカの大型SUVのラジコンが置かれていた。
「まずプランA。ハルくんにこのラジコンを貸してもらったわ。あの子たちにレースを挑んで、勝ったら返してもらうの」
「話しても聞かないなら、勝負で奪い返す! ラジコンの腕なら持ち主の僕が上だ!」
ハルが力強く拳を握る。
「もし相手がズルをしたら――」
すいかが黒板に太字で書き込む。
「プランB。穴に落とす」
「ええーーー!!!」
ハルとまりが同時に絶叫した。
「……ラジコンを」
すいかは涼しい顔で補足する。
りんごが指を立てる。
「ポイントは“名前が書いてあるか”。子どもたちはそれを根拠に、ハルくんのじゃないって言ったよね。だから――」
彼女はホワイトボードに落とし穴の図を描いた。
「茂みに作った穴にラジコンを落とす。中で私たちが待機して、すぐに分解して、パーツの内側に“HARU”って書くの!」
「外側は確認済みだから、中に書いておけば言い逃れはできない」
ももが頷く。
「それなら、あの子たちも言い訳できないわね」
まりがにっこり笑った。
「おもしろくなってきたじゃないか!」
ハルは勢いよく立ち上がった。胸の奥から湧き上がる興奮に、忘れていた少年心が火を灯された。